中心である

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恐怖と単純

子どものころ、ミステリーものを読んだり見たりするのが好きだったけど、臆病だったので夜が怖かった。家にいても、泥棒が入ってきて偶然出くわした自分が殺されてしまうのではないかとおびえていた。その不安を親に話すと、「泥棒と殺人鬼は別なんだから大丈夫よ。泥棒は物を盗むために入ってくるだけで、人を殺すためにやってくるんじゃないんだから」と言われ、たしかにそうだなと納得してから、恐怖はやわらいだ。でもあらためて考えると、そうとも言い切れない。泥棒に入って住民に見つかってしまったら、自分の犯行を隠したいがために衝動的に人を襲うことだってあるだろう。こんなことあらためて考えなくったってそうなんだけど、子どものときは単純すぎてふつうに納得してしまっていた。そのおかげで穏やかに過ごせたのだから、単純な人間でよかったと思う。